本田鈴乃はエルフと人間の混血児で、今冬受験を控えた中学生でもある。
一行で説明するとシュールだが世の中そういうものだ。
通っている学校はエルフ系の生徒が大半を占める千歳が丘中学校。受験校もこれまたほぼエルフ系で占められる聖ミレニア大学附属高校である。
ミレニア附属は女子校のため、恋に恋する少女たちには若干人気が低いのだが、鈴乃は今のところその辺に不満は抱いていなかった。
……のだが。
寒風吹きすさぶ冬の東京も、恋する少女にとってはロマンチックなラブソングの舞台である。
世界の見え方など気の持ちようで随分変わるもので、鈴乃も昨年まではただ寒いだけの季節など大して好きではなかった。
寒いなら寒いで雪のひとつも降ればいいのに、23区側ときたら滅多なことでは降ってくれない。
都会っ子らしく、鈴乃はそんな変哲のない東京の四季が好きではなかったが……今は違う。
「斎藤、部屋で退屈してるかな……たまには外で誘ってもイイよね♪ みんな寒くて外には出ないし、、人が少なければ私レベルの結界でもあまり踏み抜かれたりしないし……防寒の構文もうちょっと勉強すればきっと雪が降っても裸で平気な結界作れるよね」
若干弾けた方向に、ではあるが、鈴乃は冬の寒さを楽しむことを覚えていた。
家にいるはずの触手異星人とのめくるめく甘い一時を妄想しつつ、ちょうどいい路地裏なんかを軽く探検してチェックしながらスキップするように歩いていた。
そして以前から目をつけていた、適度に見通しがよくて擬似露出を楽しめつつ、実際は人通りの少ない理想的なポイントを確認するつもりでひょいと覗き込む。
一瞬認識を揺らされる感覚があったものの、深く考えずにそのまま視線を路地の奥に向け、そこで鈴乃は我が目を疑った。
予想外のものがあったわけではない。
妄想通りの光景が展開されていたからだ。
「ん、ぐ、……あふ、ああっ……ふぁああっ」
大量の触手。
ビリビリに引きちぎられたブラウスと下着。
数え切れない肉紐に雁字搦めにされ、見せつけるように大股開きにされたエルフの女性が、恍惚とした顔で穴という穴を犯されている。
その腹の中で触手がギュルギュルと回り、出入りし、団子を作り、腹腔内を押し回すようにうねる。その動きが変化する度に女性は白目を剥いて喘ぐ。
それはレイプのように見えたが、そうではなかった。
彼女は信じられないほどの快楽に神経を犯されている証として潮を吹き散らし、一見苦しげに見える、口に侵入した触手さえも、よく見ると往復の度に彼女の舌に縋り付かれている。
そして、その長い耳が快楽に合わせてビクンビクンと激しく上下していることこそが、彼女が心から触手の快楽に服従し、その慰撫を喜んでいる証といえた。
しばし絶句する。
そして、その肉紐の山の向こうにいた、一抱えほどのイソギンチャクのような本体が、鈴乃の方にチラリと見えた瞬間。
全体の動きがほんの一秒ほど、ピタリと止まる。
それで気づいてしまった。
「っっ!!」
鈴乃は混乱した頭で路地からかけ出る。
……あの触手は、鈴乃の恋人だ。
鈴乃が恋した、あの触手生命体・斎藤だった。
「鈴乃」
暗い部屋でクッションを抱いている鈴乃に、斎藤のバツの悪げな声がかかった。
あの鉢合わせから約一時間。
「浮気者」
「…………」
「浮気者、浮気者、浮気者」
「……俺の記憶も結構長いが、触手の分際で浮気者と言われる日が来るたぁな」
「あれ誰よ」
鈴乃は鼻声で責める。斎藤はあくまでバツが悪そうに、呟くほどの音量で言った。
「昔の客……みたいな奴さ。こちとら孕ます心配もなく、女の肌には最高の薬を分泌する身だ。水商売みたいなもんでよ」
「なんで、どうして今さらっ……。この家にいた間、もしかして頻繁にあんな風にヨソの女と楽しんでたの!?」
「そんなこたねえよ。……だけど嗅ぎつける奴は嗅ぎつけるもんだ。家に迷惑かけたくもなかった」
「っ…………」
その一言で、斎藤とあのエルフの間で多少ならず脅迫的なやり取りがあったのだろうと思い当たってしまい、鈴乃は口をつぐむ。
斎藤が女好きなのはわかっていたことだ。その触手にとって自分だけが特別に美味しい餌ではないということも、なんとなくはわかっていたはずだ。そして、女にとっては大抵、その快楽は得がたいほどに魅力的で、追い掛け回すに足るものということも。
わかっていたのに目をそらしていたのだ。
自分が、彼にとって特別になり得ていない、片思いだということに。
鈴乃に彼が一緒にいてくれたのは同情だ。全てではないにしろ、ほぼそうなのだ。
男に振られて自殺してしまうような人生経験の少ない鈴乃に、本気で惚れ込んで傍にいてくれたわけではない。
そのことをこの一事をもって思い知らされた気がして、鈴乃は歯を食いしばって泣き始めてしまう。
「っく、う、ううっ……うぇええっ……」
「お、おい、鈴乃」
「うえええええええええええっ」
鈴乃は、泣いた。
恋していたのが自分だけだなんて、気づきたくなかった。
だから。
「馬鹿が。……あのな、鈴乃」
「……ひぅっ、っ、ひっく」
「触手なんてほっときゃ増える単性生殖の生き物に、そこまでガチで情をかける馬鹿なんてお前ぐらいだぜ?」
「らって……らって、さいとうがっ」
「こないだは苗床になってガキ作りたいとか言い出すし……お前はどこまでアホなんだよ」
「しらないっ……しらないっ、さいとうがわるいっ……」
いつの間にか、この触手に優しく絡みつかれ、激しく女にされることが一番の幸せと思うようになってしまった。
この触手が自分を捨ててどこかにいってしまうことが、死ぬほど怖く思えてしまっていた。
全部斎藤が悪い。斎藤のが気持ちよくしすぎたのが悪い。
斎藤が、鈴乃に優しくしすぎたのが悪いのだ。
「だからっ……だからっ、さいとう、せきにんとってよぉっ……」
「…………」
「せきにんもって、わたしのこいびとで、いてよっ……わたしのだんなさんになってよぉっ……!」
「ホントお前アホだろ。……中学生の言うことか?」
言葉は突き放すように、声は抱き締めるように。
斎藤のいつもの麻薬的な優しさが、鈴乃の心に染み込んでくる。
否、このグロテスクな生物のぶっきらぼうな優しさを麻薬的と感じるのは鈴乃だけかもしれない。
そうだとしても、鈴乃はその優しさをやっぱり、ずっと感じていたかった。
「三年だ、ドスケベ鈴乃」
「……ふえ……?」
「あと三年、お前が俺を亭主にしたいって言い張ってたなら……そうだな、内縁の夫ぐらいにはなってやってもいい」
「さい……と……う?」
「日本じゃ単性生殖の生き物が戸籍取るのは難しいからな、それで勘弁してくれ」
「……ち、違うよ、この馬鹿斎藤っ!」
鈴乃が突然声を荒げて、斎藤はビクッと全体を震わせる。
「責任って、法律の上で結婚したいとか、そういうことじゃないもんっ……斎藤が、ずっと私を見ていて欲しいだけっ……私を、好きになって欲しいだけ!!」
「……あーあー、全く……こいつはよう」
ハーフエルフ少女の無闇に純粋な告白に、斎藤はうねうね揺れる。
「どこまで俺を欲情させれば気が済みやがる」
「……好きなら欲情して当たり前じゃない」
「チッ……ったく、知らねえぞ、昼間みたいなもんじゃ済まさないからな」
斎藤の触手が伸び、鈴乃の部屋の窓を開く。
そしてシュルシュルと鈴乃の手足に絡みつきながら、窓の外に鈴乃を連れ出す。
窓の外は屋根。
二階建ての家の瓦屋根に、斎藤は大量の触手を駆使して鈴乃を拉致していた。
「さいとう……っ」
「触手野郎がす、すっ……好きなおぬっ、す、好きな女の子に」
好きな女の子、という当たり前の一言を口に出すのが酷く恥ずかしいのか、何度も噛む斎藤。
「……エロい真似以外で表現できると思うんじゃねえぞ、このアホタレ娘がっ!」
「きゃああっ」
十数条の触手が一斉に伸び、ボタンを丁寧に外して鈴乃の制服を脱がしていく。
星空瞬く屋根の上、斎藤が魔術でも使ったのか、ちっとも寒くはない。そして、制服は一糸たりともほつれることなく綺麗に脱がされ、高い屋根の上に女子中学生ハーフエルフの柔らかな裸体が掲げられる。
認識隠蔽が効いている。どうせ誰も鈴乃がそんなすごい状態で東京の夜空に晒されているなんて認識できないだろう。
しかし、斎藤の不器用すぎる愛情表現に嬉しくなった鈴乃は、涙を拭う触手に微笑みかけて、心の底から嬉しそうに声を上げた。
「……大好き、変態っ!!」
「……お前も大概だぞこのド変態娘」
「相思相愛変態同士、最高じゃないっ」
「ホント嬉しそうにアホ言いやがって」
ぬめぬめと淫らな粘液を分泌した触手がわさわさと鈴乃の全身を這い回り始める。その異様な動きを心の底から歓迎しながら、鈴乃は僅かに動く腰をくねらせ、うっとりとその快楽に耽る。
「変態でグロの斎藤のこと、ここまで大好きな変態は私だけなんだからっ……もう絶対放しちゃ駄目なんだからっ……!!」
「チッ……何度も言うなアホ。……俺も好きだって言わせたいのか」
「うんっ」
「……好きだぞ鈴乃。お前の子宮も直腸も乳首も喉も」
「最っ低……♪」
「そんな嬉しそうな『最低』って初めて聞いた」
「ふふっ……ん、あっ……もう……っ」
くねくねと、触手が侵入しようとするのを妨害するように、それでいて本気の侵入を誘うように腰を回す鈴乃。
近所から何もかも丸見えの夕空の下、中学生ながら自慢できるほどスタイルの良いハーフエルフ少女が一糸纏わぬ全裸でで触手と戯れ、扇情的に腰を振る風景は、もはや倒錯的とすら言える。
しかし本人たちは夢中だった。
夢中で互いに快楽を与え、快楽を貪ろうと、心の底から求め合うのに夢中だった。
「斎藤うっ、ほら、ほらぁっ……私の子宮、好きでしょっ……いっぱいほじって、いじってよっ……♪」
「ケツから先にほじってやんぞ」
「いいよぉっ……お尻も、、乳首も、斎藤の触手の感触大好きだもんっ……♪ 一日中、お尻とおまんこ交互に全部の触手で犯してくれてもいいのっ……♪」
「クソッ……本当にこのガキは……」
斎藤が悔しそうな声を上げ、触手から出る粘液の量が倍増する。
興奮度に合わせて吹き出る粘液は、斎藤の言を借りるなら、そのまま少女への愛とイコールとも言える。加速度的にこのぶっきらぼうな触手生物は少女への愛情を高めているのだった。
「だから、私とっ……」
鈴乃は鎌首もたげる触手と次々にキスしながら、斎藤に訴える。
「私と……私と、付きあってください、『斎藤さん』っ……!!」
「……っくっ!」
さらに興奮したのか、各触手の先からビュクビュクと粘液を吹きこぼしながら斎藤は動きを激化させる。
もはや我慢ならん、とばかりに肛門、性器、さらには尿道すらも犯してくる触手に、鈴乃は狂ったように腰を振って答える。
どこからどう見ても異常、狂乱そのものだったが、それは鈴乃と斎藤にとっては限りなくピュアな愛情表現そのものだった。
「斎藤っ、斎藤っ、斎藤っ……もっと、もっとおなかの中に斎藤の汁いっぱい流し込んでぇっ♪ 何度でも、何時間でもっ……私、斎藤とのエッチ、続けられるからぁっ♪」
「鈴乃っ……ちくしょう、ああもう、ちくしょうっ……足りねえ、お前への感情がこれじゃあ表現したりねえっ!」
「いいよっ、壊してっ、斎藤の触手のためだけの穴にしていいからぁぁっ!!」
腹の中で触手が汁を見境なく吹きながら、暴れ竜の如くうねる。
鈴乃の子宮口を突き上げ、左右に叩くように弄び、精液溜まりをほじくるように暴れながら粘液をひっきりなしに吐く。尻の中でも同様だ。
気絶しそうに苦しく、地獄のように気持ちいい。
だがそんなメチャクチャな快楽も長くは続かない。
口ではどう言おうとも、鈴乃の肉体には限界というものがあるのだった。
「斎藤っ……ごめんねっ……ごめんね、もうっ……!!」
意識が遠くなるほどの快楽の中で、鈴乃は斎藤に謝る。
「私、もう駄目かもっ……でも、気絶しても犯していいからっ……ずっとずっと私の体、弄んでいいからっ……う、あっ……ーーーーーーーーーーーっ!!」
最後に、そんな捨て身の愛を約束し、絶頂。
真っ白になって、焼き切れる。
そんな感覚の中で、鈴乃は意識を失った。
「あー。うん。そっちに任す。場合によってはもう本気でいい。うん。それじゃ頼んだ」
鈴乃が目を覚ますと、そこは鈴乃の部屋。
斎藤は家の電話で誰かと話していた。
起き上がろうとする。と、律儀というかしつこいというか、まだ鈴乃の膣の中には触手が入っていてちょっと嬉しい。いや起き上がれない。
「ちょっ……さ、斎藤っ……」
「お、起きたか」
「誰今の……」
反射的にまた浮気の算段か、と思ってしまう鈴乃はちょっと自分の心の弱さを反省する。
斎藤はフフンと笑うような声を出して、触手を伸ばして子機を鈴乃に近づける。
「え……?」
『よう、初めまして』
「!?」
斎藤自身の声だった。
「え、な、何!? どうなってるの!?」
『俺だよ俺俺。……なんてな。初めまして、斎藤銀次郎だ』
「ぎんじろう……?」
こっちにいる方の斎藤は笑い声を上げて、説明してくれる。
「三世代ぐらい前に分かれた俺の別個体だ。比較的近くにいるし記憶の共有も長い」
「べ、別個体?」
「言ったろ? 俺は分裂する生き物なんだよ」
『はっはっはっ。そういうわけだからコッチは任せろ俺』
「頼むぞ俺」
悪戯っぽく受話器の向こうと言いあってイェーイとか言っている。
「こっちって……え? 何の話?」
「例の女の件。奴が代わりに相手するってことで話がまとまった」
『とはいえ大五郎を脅迫するなんざふてえ女だ。ちょいとやりすぎちまうかもな』
「……斎藤、大五郎?」
「……どうせ俺たち斎藤同士の間でしか用のない名前だから忘れてもいいぞ」
触手の斎藤改め斎藤大五郎は照れ臭そうに言う。
「……んーん」
にゅぽっ、と触手を膣から抜き取り、軽くキスをしてから放して本体に抱きつく鈴乃。
「忘れるわけないじゃん、私の旦那様の名前っ♪」
『なんだと俺。どういうことだ説明しろ俺!』
「い、いろいろあったんだ、っていうかそろそろ服を着ろ鈴乃っ、ママさん帰ってくるぞ!」
「やーだー、もういっかいーっ♪」
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