最近みかんの視線が怖い。
 いや、視線というか表情はいつも通りなのだが、俺の方にやましいことがあるせいだ。

 あれからウメさんに電話やメールをちょちょいと寄越せば(なんと空メールでも察してくれる)いつでもウメさんが自室でエロい準備をして待っていてくれるという「無料自宅風俗プレイ」を、2〜3日に一度ずつ利用してしまっているのだった。
 そもそもウメさんもみかんも含めて円満にハーレムプレイするような仲じゃないか、何を妙な真似を……と思われる向きもあるだろう。
 しかし、俺のようなクソオタにとって、女の子複数相手には押すに押せない心理障壁があるのを理解して欲しい。
 流れによっては組んず解れつのセックスもするとはいえ、基本的には俺は最下層のフリーターであり、みかん以外の女の子は全員それぞれ俺より立派だ。いや、みかんも今は遊んでるだけで、実は色々業績があるかもしれない。どうも千年ぐらい生きてるっぽいし。
 そんなコンプレックスこじらせた俺が、なんとなく容認されているといっても「ぐへへおめこすべえ」とシラフで迫れるわけなどないのだ。
 が、ウメさんはそんな俺にナースコールを握らせてくれた。
 ある意味、行動としては「おめこすべえ」と変わらないのかもしれないが、ほとんど交渉の必要もなく、即その気で待っていてくれるというのは、心理的にものすごくハードルが下がった。
 そして、「便利な」セックスをしているという罪悪感や背徳感も、逆にのめり込む理由になっている気もする。
 ちょっとした時間にサッと部屋を訪れて、ろくな会話をする間もなく、一分も経たずにベッドで貪りあうようなセックス。そして、射精をしたら、ウメさんは自分の股間の精液を拭くより早く、俺のチンポの後始末をしてすぐに送り出してくれる……という、恐るべき手際。
 それでいて、遊びに来る時はそれをおくびにも出さない。
 俺専属風俗嬢、「都合のいい女」という関係を自ら楽しんでいるようなところが垣間見えるが、とにかく彼女とのそういう生活は一ヶ月近く続いている。
 そして日に日にみかんの視線が怖くなっているのだった。

「のう、健一」
「ん?」
「最近お主、ワシに隠し事でもしておるのか」
「!?」
 何気なく、テレビを見ながら発せられた一言。
 それに対し過剰に驚いてしまう俺。
 ピクリと耳を動かして、俺の声の調子に反応し、ゆーっくりと振り返るみかん。ジト目。
「随分とあからさまな反応してくれるのう?」
「な、何も言ってないぞ」
「伊達に長い耳つけとると思うとるのか。息が止まる音ぐらい聞こえるわい」
「意外と性能いいのな、その耳……いつも音漏れ音量でイヤホン突っ込んでるくせに」
「で、何を隠しとるんじゃ」
「…………人の隠し事に無理に口出すのはよくないんじゃないかなって」
「今さらワシに後ろめたいことなんぞあるのか。およそあらゆる醜態を晒しておる気がするが」
「……ま、まだうんこ漏らしたりとかその手のアレはないはず」
「自慢になるのかそれは。酔い潰れてゲロで溺れかけたのと、どっちが恥ずかしいかのう?」
「うんこは別次元じゃないか!?」
「ワシをそこらの女子中学生と勘違いしとりゃせんか? いい加減いい歳になれば、糞の一つや二つでどうこうとは思わんが」
「ゆ、許された……」
「待たんか。別にトイレ以外で脱糞していいとは言うておらん。いや違う、そもそも何をそんなに必死に隠しておるという、な?」
 みかんが困惑を始めてしまった。
 うん。そろそろ変にからかうのはやめよう。ややこしくなってきたし。
「えーと、だな……」
「怒らんから言うがいい。借金とかなら最悪、跳んで逃げるくらいは手伝ってやろう」
「いきなり滅入る候補から入りやがったな……」
「挙動不審の理由としては妥当じゃろう」
 いや、まあ、思い返してみると確かにね。たびたび不自然に雲隠れしたり行き先を濁してみたりは、嫁に隠れてサラ金の催促を誤魔化す駄目男的なトコはあったかもしれない。
「借金はしてないから安心しろ」
「ではなんじゃ」
「……その、えーと」
「…………」
 なんと切り出すべきか迷い、ここらで空気をぶち壊してウメさんか日夜子嬢でも乱入してこないかなー、と少し天井を見上げて期待してみたりしたものの、さすがに神様もそこまで面倒見が良くはないらしい。
 少し唸ったあとに、じっと待っているみかんにおずおずと真相を伝える。
「う、ウメさんと……たまに内緒でエロいことしてる」
「……たまに、というと」
「二、三日に一度……ぐらい?」
 指折り数えてみる。あれ? この一ヶ月で十回やそこらで済むっけ?
 ちょっと自信がなくなってきた。
「……それだけか?」
「あ、いや、もうちょっと多いかな? その、時々ウメさんちに上がり込んでササッと」
「まあウメのことじゃから、放っておけば事あるごとに誘惑しておるのは想像もつくが。それに何をそんなに怯えておる?」
「…………え、えーと」
 予想に反してみかんは特に怒らなかった。
 いや、なんで怒ると思ってたのか、ふと考えてみれば確かにちょっと不思議だ。
 何股になるのか知らないけれど、一応、お互いにそれぞれ肉体関係を認め合い、流れさえあればくんずほぐれつの乱交だって幾度もしている同士。特にみかんとウメさんは隣人としても結構長いし(俺周りでは、の話だけど)、特に仲が悪くもない。ウメさんがとりわけエロにオープンなのも、みかんはよく知っている。
 確かに、俺がみかんに必死に隠すようなことではない……?
 いや。
 そうだ。ウメさんとエッチを頻繁にしていることを隠したかったんじゃない。
 みかんがいるのに放り出して、ウメさんに相手してもらいに通ってる。そのことでみかんが気を悪くしないか、というのが怖かったんだった。
「……みかんに相手してもらわずに、ウメさんにいちいち抜いて貰うのって……ほら」
「確かにちと嫌味じゃな。じゃが、そのへんはお主がヘタレなせいじゃろう」
「ぅぐ」
「ウメなら性的な対象として全面的に見ても何も困らんからのう。本人も含めて。……ワシは一緒に寝起きしておるし、こんなカラダじゃから乱交にでもならなければ思い切りがつかぬ……とか、そんなところじゃろ」
 こんなカラダ、とは、要するに一番ちびっこなこと。
 肉体的には中学生程度だ。俺の周りではみかんがぶっちぎりで軽く幼く、次が生田、その次あたりにライムちゃん、静音さん、さくらに日夜子嬢、ウメさん……という順の肉体成熟度。
 さくらはエルフじゃないので、多分他の娘より内部的な熟女度は上回っちゃってるんだけど、その辺はまあ触れない方向で。俺だってそれより年上だ。
 とにかくみかんはぶっちゃけロリい。
 性欲の捌け口という意味では、世間的にはあんまり適格とはいえない。
 それよりはグラマラスでセクシースタイル王道まっしぐらのウメさんの方が、問答無用で性欲を掻き立てる、というのも、事実だ。
 でも、それより。
「……みかんにそういうのを、迫っちゃうのは……うん、確かになんか気が引ける」
「…………」
「でも、みかんのカラダが射程外とかそういうことじゃなくて……なんというか、一緒にいるのが心地いいし……ほら、俺たちいつも一緒に家にいるから、エロとそれ以外の境目が切り替えづらいし。自然にそういうのをアリにしちゃうと、なんか……つまらない関係になっちゃったりしないかって……」
 多分、そんなのは俺が結局、童貞脳だってことだろう。
 この八畳一間の愉快な生活。それを壊して踏みにじる。
 みかんとセックス、というのを選択肢に含めるのは、そういうことなんじゃないかと怯えている。
 世の中じゃセックスがあってもうまく生活してる男女はたくさんいる。ほとんど、と言っていい。
 世の中ではそれを夫婦関係という。
 でも、俺は急に激しいエロの世界に踏み込んでしまったせいで、そこにうまく身の置き場を見出せない。
 つまりは童貞の思考術のままってことだ。
 だがそれは、今のような関係の中では引け目ばかりを生み出すことになる。
 みかんだけじゃない。他の女の子全てに対しても、どこか向き合い方が歪になる。
 わかっている。わかっているけれど。
「つくづく……面倒な奴じゃのう」
 みかんは溜め息をついた。
 そして、うつむく俺に膝立ちでそっと近付き、その細い腕で頭を抱き寄せる。
「ああではないか、こうではないか、と、つまらんことを気にしすぎて、勝手に自分で罪人になって。どうせ遠慮ばかりしていれば同じじゃ。どうなるともわからんなら、やってみてから『つまらんことになった』と言えばよい。そして、どうせなら徹底的に、まぐわいに飽きるまで楽しんでから言うがよい」
「……お前な」
「二、三日はバイトの予定もなかろう。……やってみんか。世に言う『爛れた生活』という奴を」
 みかんはそう言ってキスを落とし、ゆっくりと下着を膝まで下ろす。
 そこから先は自由だ、と、俺を挑発する。
「……わかった。それじゃあ」
「飽きるまでじゃ……♪」
 みかんは妖艶に微笑み、俺はそれから……日常と境目のないセックスに溺れる事にする。

 まずは畳の上で一回、布団を敷いて二回、みかんと汗だくでセックスを済ませる。
「……腹が減るのう」
「なんかあったかな」
 そして、俺の精液を胎内に溜めたままのみかんが裸のまま台所に向かうのを、俺もチンポをぶらぶらさせつつ追い……そして、しゃがみこんで冷蔵庫を漁るみかんの口元にチンポを近づける。
「なんじゃ。ソレは食事にするには量が足らん……ちゅっ」
 みかんは俺の下品なイタズラに、余裕の亀頭キスで応じる。
「カレーに使った肉が多少と、レタスに芋にきゅうり、イカの塩辛……あとレンバスが山ほど凍っておる」
「レンバスでいいか。裸で料理もナンだし」
「裸エプロンも、今の流れならそれほど恥ずかしくもないがのう」
「俺は素っ裸の方が好きだぞ」
 立ち上がったみかんを後ろから抱き締めて、みかんがレンバス二個をレンジにかけるのを邪魔しつつ、薄い胸と赤ん坊のような尻を撫で回し、堪能する。
「食った後ならいくらでも相手してやると言うに」
「駄目。ここでこのままもう一発だ」
「……一発出したらちゃんと食うんじゃぞ。お主はともかく、ワシは腹を鳴らしながらまぐわうのは好かん」
「へへへ」
 みかんは俺の幼稚なまでの欲望を溜め息交じりに受け入れる。
 そして、そうと決まったらみかんを冷蔵庫の扉に押し付けて、そのぐっちょりと精液と愛液の混合液で濡れた肉穴に再びチンポを侵入させる。
「ん……く、ぅっ……♪」
「あー……みかんの中あったかい」
「……グズグズしとらんで、始めると決めたらしっかり頑張らんか」
「急かすなよ、風情がないなあ」
「さっきあれだけ激しく突き上げたんじゃ、今さらまったりムードではもどかしいわい」
「なんだ、物足りないのか。早く飯食いたくておざなりになってるのかと思った」
「……う、ウメに無駄遣いされた程度はたっぷりワシにも楽しませてもらわんと、こんなのをやろうと言うた意味がない」
「結構淫乱だな、お前」
「……お主、自分では気づいとらんかもしれんが、割とその指……凶悪なんじゃぞ」
「チンポが凶悪って言って欲しかった」
「エロゲーのやりすぎじゃっ。褒められるだけ……ありがたくっ、思わんか」
 みかんは腰をくねらせて催促する。
 そんなに大きくない一人暮らし用の冷蔵庫にしがみつく褐色の細い裸体。少し暗くなってチラつく蛍光灯が、その汗と体液に濡れた体をどこか安っぽく映し出す。
 しかし、そのカラダの中をチンポで擦り上げるたび、極上の快楽が腰を駆け抜ける。
 凍ったレンバスはシンクのまな板の上。一発みかんに精液を流し込んだら、それをレンジにかけなくてはいけない。
 二人とも裸で狭いキッチンに立ち、そんな日常と非日常、平時とエロスの混濁した状況を楽しむ。
「け、健一っ……す、少し、移動じゃっ。れ、冷蔵庫ではっ……そ、そんな突き込みに心もとない。流しに……」
「我慢我慢。今中断したくないんだって」
「調子に乗っておるのうっ!?」
 バランスを取り、冷蔵庫を壁にぶつけないように四苦八苦しているみかんを遠慮なく犯す。
 小さな腰が俺の動きに時に抵抗し、時に逃げるように揺れるのが可愛く、また濃厚に快楽を生む。
 ほどなく、俺はみかんの奥底に射精する。
「ぅくっ……ん、ううう……っ♪」
「うはっ、あ、ああっ……」
「……また容赦なく出しおって。なんだかんだで風呂で乱交するのに慣れた成果か」
「……みかんがエロいからだよ」
「何発目で弾切れになるかのう?」
 床に膝をつき、カカトにザーメンを落としながらも挑発的に笑うみかん。
 レンバスは解凍しておいしくいただきました。

 そして、夜。
 疲れ果てて布団の上でうつぶせに休憩しているみかんに、俺はふたたび覆いかぶさる。
「……もう少し休ませんか。腰が抜けるわ」
「トーンキャストならすぐ治るんだろ」
「変な知恵をつけおって。なんでも魔法で解決するのはつまらんというに」
「腰が抜けたら抜けたでしばらく家事は代わってやる。それでどうだ」
 寝たままの褐色の尻の間にちんこをこすり付ける俺。
「……猿め」
「どーしても嫌っていうなら諦めるけど」
「お主、実はロリコンじゃろ」
「なんだよ急に」
「たまたま穴があるからウメで満たしておっただけで、実は幼い方がイケるクチなんじゃろ。そうに違いない。こうして無礼講になった途端、ワシにこんなにサカれるなんて、そうとしか思えん」
「……なんだよ、結局嫌なのか、どうなんだ?」
「……ククク。なに、ちと……面白くてのう」
 みかんは枕に埋めたまま顔を見せず、ただ僅かに腰を迎えの角度に持ち上げる。
「好きにするがいい。この腰、立たなくしてみせよ」
 俺はその言葉に甘えて、みかんにまた抜かずの三発を流し込んだ。


「……はい、事情はわかりました」
 そして、前後不覚のまま寝てしまって目が覚めたら生田とさくらとウメさんがいた。
 最近プライバシーの概念がない俺たち。
「まあ、みかんちゃんとはとっくにこういう生活が自然な気がするのも事実ですけど」
 生田は腕組みをして溜め息をついた。……いや、お前らの認識ってそんなだったの?
「それより、どうも紀州さんのところで性欲を満たしていたというのが気に食わないわ」
 さくらは俺とみかんがほとんど裸で朝から晩までヤリ放題していたことは割とどうでもいいらしい。ウメさんが専属風俗嬢していたことの方がイラッとしたようだった。
 いやなんとなくわかるけど、でも別にそれはそういうプレイであってね?
「ザッキー、そういう楽しげな過ごし方するならなんで呼ばないのさ。ウメさんも時間無制限だぜい?」
「ウメは大人しく待ちプレイしておかんか! プロが出張ってきたらワシの出る幕がないじゃろ!」
「えー、でもザッキーも常に選ぶ自由がだね?」
「そーゆーのって選ばれる確固たる自信の現れですよね……」
「公平を装った不公平よ」
 そろそろ服着ていいですか。

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