12月24日は白い雪が舞っていた。
「……寒いな」
幻想的な空を見上げながら息を吐く。
白く濁った空気は数瞬の間にほどけていった。
「でも、今日だけは家に引き篭もりってわけにはいかないよなぁ」
片手にはメモが握り締められている。今までの一ヶ月の間に、他の住人たちが何を望んでいるかこっそりと聞き調べた秘密のメモだ。
せっかく調べたのだから使わないわけにはいかないだろう。
みんなの笑顔を思い浮かべながら、雪を踏みしめて俺は歩き出す。
「……しずえちゃんにもクリスマスプレゼントあげたいな」
「いやおかしいでしょ先輩!? 何リアル放棄してぶつ森にダイブしてるんですか!」
「ええい邪魔をするなナマデンワ! セガ村は俺の村なんだ! 俺が村長さんなんだ!」
12月24日の大田区はいいお天気でした。別に雪は降ってません。
というか大田区の海岸側エリアは特に降らない。23区内で降っててもだいたい最後まで降らない。きっと何かOKAYAMA結界みたいなのあると思う。
「祝いの日ですからね。今夜は張り切ってレンバス作ろうと思っていたんですけど何故か材料が切れちゃってて……どこに置いたのかしら、いえボケるような歳じゃないですよ私、見た通りですからね?」
静音さんが首を捻りながらもそこらの店頭で売ってたホールケーキを切り分けている。
きっとレンバスの材料は日夜子嬢がうまく隠してくれたのだろう。GJ部と言わざるを得ない。ぶちょーかわいい。
「それにしても……ケーキ入刀、か……」
はぁ、と静音さんが溜め息をつく。
「えっと、何か」
思わず話の続きを促してしまう。促してしまった。
「いえね、最近こう……同級生が再婚ブームで。初婚より豪華ですよね再婚の披露宴って」
「あ、あー……そ、そうですね」
わからなくもないのがちょっと自分もヤバイ歳になってきていると思う。
中学や高校の同級生もまだ何人かは年賀状程度の親交があるが、早い奴は俺が大学にいる頃にはもう結婚していたので、別れるのにそれから三年我慢したとして、次の相手と1〜2年奥ゆかしく交際してゴールイン。とまあそんなコースでちょろちょろ再婚してる奴もいたりする。
で、金のないハタチやそこらの頃はオトメの夢としてウェディングドレスだけは着つつ、ジミ婚とか言って安上がりで済ませるのがブームだったが、もう今ぐらいの歳になるとそこそこ派手な披露宴ができる蓄えもできてくるわけで。
「やっぱりいいですよねえ……ああいうの。なんで死なないんでしょう」
「ヒッ」
不穏な一言に怯える俺。
「あ、いえ、違います今のはちょっとクマムシの本を昨晩読んでましてっ」
「……管理人さん、それ無理があります」
生田が俺の代わりに突っ込んでくれる。ありがたい。
そんな俺たちを横目に、バイトヘルで延々ボールペン工場していたみかんがふとつまらなそうな顔をした。
「しかし、騒がしいのがおらんとこれはこれで少し物足りんのう」
「やっぱウメさんいないと寂しいか?」
「そうは言わんが……盛り上げ役じゃからのう、こういう時は」
ウメさんは今日は別口のクリスマス会。ライムちゃんも一緒だそうだ。
……というのは建前で、どうも最近俺へのアプローチに性的オプションが解禁されたことにより、他の女の子たちがウメさんに対しとても厳しくなっているのだった。
どうも今夜よそに出ているのはそういう関係で、今夜というビッグイベントでまで持ってかれてたまるか、と締め出された感がある。
でもその当人がいないとはっちゃけるタイミングが掴めないというのもひとつの事実のようで。
……微妙にじりじりと互いに間合いを計ってる感じの緊張感に耐えられず、セガ村(とびだせどうぶつの森のマイ村)に逃げ出すのくらいは見逃していただきたい。
これでも耐えたんだぞ。AGEの続きを見ようとしたら怒られたし。もうあらかた残りの筋はウィキペドとかで知ってるけど。
「あとは不動さくらじゃがのう……仕事が長引いておるか」
「こういう日ぐらい察して早く返してくれる職場がいいですよねえ。っていうか不動先輩、職場を割と掌握してる感じするのに」
「じゃからこそ、大多数がイチ抜けしたい時に貧乏くじを引くということもあるからのう」
「……なんかみかんちゃんが社会に出た人みたいなことを」
「失敬じゃな! ワシはお主らの誰よりも年上なんじゃぞ」
……そういえばそうだった。というか、お前本当は何歳なんだよ。怖くて聞けないけどさ。
あとちょっとぐらいバイトしろ。
「それじゃケーキだけでも食べちゃいましょうか。日夜子……は、今ちょっと地球にいないみたいなんで呼んできますね」
「いやそんな、いないならいないで別に」
ちょっと呼んできますねで何光年跳んでクリスマスパーティに参加させる気なんですか。
と、そこに車のタイヤのスキール音が聞こえてくる。
……スキール?
「何事? こんなところに暴走車か?」
「なんだかんだでこの辺いるみたいですからねえ、マガジン系の青少年」
「今のマガジンにヤンキーはほとんどおらんぞ」
窓から外を眺めると、スキール音の正体がしまむらハイム前の駐車場に高速で乱入してきた。
駐車場をヘッドライトが照らしたと思ったらそれが信じられない角度で反転し、駐車場に白煙を残しながら世界衝撃映像スペシャルみたいな華麗さで駐車成功。
その中から颯爽と出てきたのは……さくら。
「もう! ああいうことをされるとウチの評判が悪くなるし、タイヤ痕目立つじゃないですかっ!」
俺たち三人が呆然としている中、静音さんはその恐るべき駐車テクには特に衝撃を受けていないようだった。前々から思うがこの人の胆力はどうなってるんだ。
そして小走りで俺の部屋に駆け込んできて満面の笑みのさくら。
「ケンくん、メリクリッ!」
「お、おー、めりーくりすます……」
一番の常人たる存在ながら、時々一番とんでもない真似をしでかすさくらだが……クールビューティといえる彼女がそんなに急いでまでイヴに帰ってきてくれて、その笑顔を向けてくれているというのはやはり不覚にもときめいてしまう。
「紀州さんは?」
「別口のクリスマス会じゃ。今夜は戻らんぞ」
「そう。あ、はい、シャンパン。ちょっと振れちゃってるかもしれないけど」
「シャンパンといったらあれでしょう、シュポーンってあれ」
「ケンくん、やってやって」
「窓には向けないでくださいね」
コルク飛ばしか。……って、頼まれても特に慣れてるわけじゃないんだけどなぁ。
でも確か振って振って……親指で少しずつ緩めるんだっけ?
こんな感じかな、と思いながら天井の隅に向けて……発射。
ポーン!といい音がしてコルクが飛び、そして……泡が吹き散った。
「うわわわわっ!?」
「にゃわっ、や、こっちに近づけるなPSPが濡れるっ!」
「ひゃ、濡れっ……冷たっ!」
「あうう〜っ……もうっ、ケンくんこっち貸してっ」
そうだった。炭酸で飛ばすんだから泡が溢れて当然だった。
見事に大惨事になってしまい、コタツや服がシャンパンまみれになってしまう。脱兎の如く退避したみかん、それと位置が離れていた静音さんはともかくとして、近くにいた生田とさくら、そして俺はベトベトになってしまった。
「わ、悪い」
「あーもう……まぁいいですけど」
「そうね。こういうのもパーティらしいといえばパーティらしいわよね」
生田とさくらは揃って許してくれる。二人ともそれなりに上等そうな服なんだけど。
んで。
ケーキとシャンパンによるパーティ開始を前に、さすがにそのままというわけにはいかない。
が、このしまむらハイムは風呂共同。
つまりこうなる。
「まさか、こうなるのを見越してシャンパン買ってきたわけじゃないですよね……?」
「あら、コルク飛ばしを煽ったのは生田さんじゃなかったかしら?」
「……まあそうなんですけど……それすら見越してやってきそうで。不動先輩だし」
「あなたの中で私がどういう評価なのかなんとなく分かるわ。……今さらだけど」
しまむらハイム自慢の大浴場。洗い場に生田、俺、さくら。三人揃って体をごしごし。
普通この歳で、異性を挟んで平然とやるようなもんじゃないが、まあそこはそれ。このしまむらハイムはエルフ治外法権であり、水浴びは混浴全裸がルールであり、もうなんというか、そう。俺と一緒にお風呂というのをエルフたちが誰一人嫌がっておらず、それどころかこの前の童貞喪失事件からは隙あらば誘惑してくる(主にウメさんが)始末なので、俺争奪戦の参加者たる生田とさくらは日本人的な常識を持ちながらも、俺と混浴することに既に慣れるほどの回数を共にしていたのだった。
そうは言ってもさすがにエルフ組も地球人組も、互いに見ている状況で風呂で一発というのは気が咎め、俺はまた嬉しくも苦しい生殺しパラダイス状態だったのだが。
いつもはみかんやウメさん、あるいは静音さんや日夜子嬢が一緒に入っているのでその均衡は保たれていたのだが、ついに今夜、その均衡が崩れてしまっていた。
これは「今夜ぐらいは」とウメさんを追い出したことの地続きの問題なのか。それともただの偶然なのか。
おそらく三人ともが、その微妙な問題を考え込んでいる。
もしも偶然であり、チャンスであるならモタモタするのはいけないことだ。しかし、「今夜くらいは生田やさくらに譲ろう」という意志の働いた結果だとすれば、今この瞬間にも聞き耳を立てられているかもしれないわけで、居心地がとても悪い。
そんなこの状況でどう動くか……いや、俺は選択肢なんかないような気もするけど、彼女たちが。
「さて、生田さん、どうするの?」
「……ど、どうってなんですか」
三人とも鏡だけを見たまま。お互いを直視するのはなんとなくいけない気がしたまま。
いや。
さくらだけは、平然とこちらに。
俺じゃない、俺越しに生田に顔を向けた。
「私はそろそろ限界だから。生田さんにその気がないなら、二人きりにしてもらえると嬉しいかなって」
「う……」
……あ、相変わらず……唯一の常人とは思えない豪胆ぶり。
「わ、私も……私だって、その」
「貞操を捨てるには勢いも大事だけど、人の追従じゃ思い出の重みは半減よ? それでもいいのかしら?」
「……ふ、不動先輩には関係ないことです」
俺を挟んで、美女が二人。裸で挑発しあっている。
俺、動けない。へたれだとは自分でも思うが、まあ二人をそれぞれに好きなのは確かで、しかし今、俺からガバッといける感じの流れじゃないし。
つくづくなんでこんな流れになっちゃったんだろうなあと思う。俺、成就するにしても、もっとこうささやかな感じにいくものとばかり思っていたのだけれど。
と、半ば現実逃避気味にぼーっと見ていた鏡に、さくらがフレームイン。というか、そっと肩に寄り添ってきた。
「ケンくん。……前にエッチしようって雰囲気になったとき、本当にしちゃってたら……今、どうなってたのかしらね?」
「って、先輩そんなことを!?」
「いやほら、みかんたちに記憶いじられてたときのことだし!? お前も知ってたはずだし!?」
言い訳をするために顔を向ければ、生田は健気に胸を隠しつつも思わぬ近距離に迫っている。
俺の耳元からさくらが挑発的な笑みを浮かべ。
「ホント、あの時にシておけばよかったわよね。それなら今頃、子供の二人や三人いたかもしれないのに」
「妊娠前提!?」
「あら、私結構一途なのよ? ケンくんさえその気になったら一発妊娠でもかまわないくらいには思ってたんだから。……っていうか、今この時も思ってるんだから」
「一途なのはその歳まで先輩に付きまとってるあたりでわかりますけど」
「付きまとうって……あなた、たまにトゲきついわね」
苦笑するさくらは、そのまま俺の背中に手を回し、豊満なおっぱいを押し付けてくる。
「どう、ケンくん。……クリスマス妊娠、させてみない?」
「う……や、やる気だな」
「しょーじき、そろそろオトメがカッコつく歳でもないからねー。ケンくんがあの時奪ってれば違ったのに」
「わ、私だって先輩とするチャンスあったし! その時にセンパイがその気だったら私ハタチになる前にっ……」
「い、生田、見えてる見えてる」
「今さらこんな話の最中にそんなことで騒がないで下さい!」
生田は吹っ切ったように体を隠す手を振り下ろした。
また耳元でさくらが笑う。
「それじゃ、お互いこれ以上グダグダになる前に……ね?」
「……はい」
二人は、アイコンタクトを通じさせた。
洗い場に横たわる俺の上にまたがるさくら。
「ち、ちょっと……勇気がいるわね」
「気合が足りないなら代わってください。私が先でいいでしょう」
「まさかっ……年長者に譲りなさいよ……っ」
喋りながら、意を決して俺の胸に手をつき、肉棒を自分の淫裂にねじ込んでいくさくら。
それを、横から所在なさげに見下ろして順番待ちをしている生田。処女二人が競って自分に処女膜を貫いてもらおうと裸で争ってる、って、字面としては最高にエロいし実際とてもいやらしいんだけど、二人それぞれに関係が違うだけに……どっちも別々の形で大切で、共に過ごした年月があるだけに、その視線はなんとも居心地が悪く……そして背徳的でゾクゾクする。
「は、はいっ……た?」
「まだいけるんじゃないですか? ちょっとプルプルしてますし」
「こ、これ以上……?」
「先輩、ぐいっとやっちゃってみて下さい♪」
「お前、さくらイジメに目覚めてないか……?」
「まさか。先を越されて嫉妬してるだけですよ」
堂々と言ってのける生田。
彼女の言う通りにさくらを突き上げると、実際まだ押しこむ余地があり、さくらの中の行き止まりまでちんこが突き通った感触がようやくあった。
「ひぐっ……く、うっ……し、処女なくすのも遅いと痛いっていうけど……老いないエルフはどうなのかしらね」
「どうだったんですか、先輩?」
「お前、俺までイジメようとしてない?」
「まさか。みかんちゃんにも嫉妬してるだけです」
生田の笑みがどんどん邪悪に見えてきた。
そして、さくらは俺の腰の上でしばらく頑張っていたが、やがて自ら抜いてしまう。
「っ、は、あっ……ご、ごめんねケンくん、また後で……後でならじっくり、射精させてあげるから……ちょっと休ませて」
「やったー。どいてくださいね」
よほど痛かったのだろう。顔をゆがめつつ退くさくらに代わり、生田は俺の上にまたがる。
「……俺が上になった方がいいんじゃないのか、こういうのって」
「私と不動先輩の覚悟自慢大会なんですから、黙って犯されてて下さいよ」
「俺犯される側なの!?」
「別にいいじゃないですか。先輩のすることは一つですし」
「……何」
「マーキング。でしょ?」
生田は眼鏡を外したせいか、いつもの「後輩」という雰囲気を脱ぎ捨てた「女」の顔で艶然と囁く。
「この子宮は俺の縄張りだ……って、みかんちゃんやウメさんにも匂いつけちゃったんでしょ? 上だろうと下だろうとやることは同じですよ、この無節操野郎♪」
「罵倒されてるのか俺は」
「どうなんでしょうね」
そう言いながら、生田は俺の肉棒にミリミリと自分の処女を破らせていく。
先ほどさくらが言っていたように、年齢の違いで痛みに差があるのか、あるいは生田との相性がいいのか。生田はさほど痛そうな顔をすることもなく、その処女を俺に捧げきった。
「は、あっ……さて、あとはマーキングするだけですよ……♪」
「今さらだけど……マーキング、されていいのか、お前」
「しなさい。命令です、先輩」
「命令かよ」
「それで責任とって嫁にとると完璧です。褒めてあげます」
「……えー」
「そこでえーって言うんですか」
「冗談だよ。……好きだぞ、生田」
「……な、何人にそれ言いましたか」
視線を逸らしつつも耳でぴこぴこ喜んでる生田。……可愛い。
「今のところ、そんなに安売りはしてないぞ」
「……信用できませんが……う、嬉しかったので合格っ」
生田はそう言うとグイグイと腰を動かし始める。
正直に言って、あんまり上手いわけじゃない。ウメさんやライムちゃんを先に味わっちゃうと、まあそのこなれてなさも理解できてしまう。
が、それでもこの可愛い後輩が、俺にここまでついてきて、ついにこうして体を重ねてくれているということが……あの頃憧れだったさくらと体を重ねたことと同じくらいに嬉しくて。
俺はいつしか射精していた。
膣の快楽と射精の快楽に切れ間がなく、いつ出ていたのか自覚しないうちに。
「……先輩」
「……生田」
「ふ、二人ともっ……私をのけ者にして世界作らないでっ」
精液で濡れたちんこに、再びまたがろうとするさくら。
そこにガラリと引き戸が開き、みかんと静音さんが入ってくる。
「む、まだ入っとるのか?」
「こたつ片付けちゃいましたけどいいで……す、よね?」
そして、さくらと生田が股間から血を流しつつ俺のちんこを奪い合っている情景に遭遇する。
時が止まり……そして。
「ずるいですっ!」
「か、帰ってこぬと思ったら!」
……別に気を使ってなんかいなかったらしかった。
続行は必死に辞退した。というか、連発できずに萎れかけていた。
そして生田はその晩ずっと機嫌がよく、さくらはずっと恨めしそうだった。
ごめんさくら、また埋め合わせに……って、どうしよう。
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