北方エルフ領を特徴付ける古代結界は単に「内」と「外」を断絶させる機能ばかりでなく、いろいろな機能があるらしい。
迷宮やドラゴンスレイヤーと並んで遺跡文明を代表する遺物であるそれは、本来は限られた土地を……ええと、存在焦点の複数設置?とかよくわからん理屈で(アイリーナ女史とディエルは「本に複数の綴じ目と目次をつける感じ」とか言ってたけどよくわからない)、狭い土地を広く使う意図で設置されたらしい。
なんでも、結界外の円周を歩いて内部を計算すると100ぐらいの広さなのに、内部の各氏族の領地を測量して合計すると750ぐらいの広さになるんだそうだ。
ディアーネさんとかヒルダさんとかは感心していたが、俺の頭じゃもうわけがわからない。
「ええと、外と中の広さが違ったら……困るんじゃないか? 結界っつったってディアーネさんたち無理矢理侵入できたわけだし、壊そうと思えば壊せるんだろ?」
素朴な疑問をディエルにぶつけると、ディエルはこくりと頷いた。
「ああ。すごく困る。仮に結界機能が一気に消失した場合、一番被害の少ない予想で『理論上の差を埋めるために地面が歪んで結界跡地全体が東方山地以上のギザギザ地形になる』。一番ヤバい予想では『存在の重複に耐え切れずに大陸の北半分巻き込んで大爆発する』」
「何が」
「土地自体が」
「意味わかんねえ……」
「でも、やろうと思えばできるということはわかってるんだ。俺たちエルフも伊達や酔狂で必死こいてたわけじゃない」
遺跡文明の遺物ってなんでこう、とんでもない諸刃の剣ばっかりなんだ。
で、そんな古代結界の機能の中には、結界内で瞬間移動する、という機能もあるらしい。
「といっても氏族庄同士の特定の地点でしか出来ないから、聖獣のいる迷宮まではかなりの距離、歩きになる。そのつもりで」
「……迷宮なんだ、その聖獣のいるところ」
「ああ」
なんだか急に冒険家っぽいお膳立てが整えられていく。
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