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ちゃぷーん、と。
ライラ、マイア、俺が並んで男湯に浸かる。
ハリー爺さんは向こう正面に座ってライラの乳を拝んでいる。子供二人はもうちょっと離れつつ、ライラとマイアの体をチラチラと見て何かボソボソと話し合っていた。
「ほ。童たち、おっぱいなぞ珍しいかえ?」
「人間はなんでそんなに胸に執着する」
鼻歌交じりのライラと、ちょっと不機嫌そうなマイア。子供たちの会話でも聞こえたのだろうか。
……子供たちに代わって反論してあげることにした。
「おっぱいは正義だ」
「……人間」
「ほほ。そなたは正直じゃな♪」
「ポルカっ子はおっぱい好きでナンボだ」
力強く俺が言うと、ハリー爺さんもその仙人じみた髭を軽く撫でながら力強く首肯する。
「ウム」
子供たちは爺さんを救世主のような目で見た。
「……お、おっぱい好きってヘンタイ……じゃ、ないのか、じっちゃん」
「神は、男にちんこを、おなごにおっぱいを与えたもうた。どちらも素晴らしい、大切にすべきものじゃ。覚えておけ子供たちよ。互いの良さを認め合うことこそ、神様の御心にかなう行いなのじゃと。お主らは正しい。おっぱいは正しい」
「そ、そうなんだ……」
どうでもいい老人と子供の心の交流は置いておくとして。
「……や、やっぱり、お前、巨乳好き?」
「もちろんだ」
「そうか」
マイアが少し寂しそうな顔をする。
「私がライラ様みたいになるには、時間がかかる。ドラゴンだから」
「ああ」
「…………」
自分の、まだ膨らみかけのなだらかなおっぱいを見つめ、マイアが黙る。
……褒めて欲しかったのかな。
つってもマイア、あくまで人質であって俺の女ってわけじゃないからなぁ……無闇にコナかけるような言い方もどうかと思うし。
と思って少し気まずい思いをしていると、マイアの背後を回すように伸ばした手で、俺の肩をトントンと叩くライラ。
「?」
目を見ると、ちびライラを俺の肩に飛ばしてくる。
そして、耳の穴に囁き。
『褒めてやらんか』
「?」
『この娘とて寂しいのじゃ。愛情に飢えておる』
「……」
でも。
と、反論しようとすると、ライラはピッと俺の額に指を突きつける。
そのまま、軽い幻影空間に取り込まれる。
幻影空間は一瞬でそれとわかるように構築されていて、時間が止まり、うっすらと霞んだ視界の真ん中に、温泉に浸かっているのとは別のライラが立っていた。まあ全裸なのは基本。
「ライラ?」
「……最初に謝っておこう。すまん」
「何が」
「…………」
ライラがマイアにちょっかいをかけたことも。
マイアがドラゴン的にも特殊で寂しい境遇だということも。
幻影ならではの情報量と時間で、しっかりと語られた。
「と、いうわけでじゃ。……せめて、交尾の素晴らしさ、教えてやってくれんか。何、前にも言ったはずじゃと思うがドラゴンは交尾をそれほど重大には捉えておらん。教えてやる、という程度で良いのじゃ」
「というか、ライラ」
「ほ」
幻影のライラにチョップ。
「何をする」
「元はといえばお前がイタズラしようとしたのが悪いんじゃねーか! それドラゴンパレスとの外交問題にならないのか!? ドラゴン同士のことは知らないけど勝手に手を出すな!」
「ほほほ……言ったはずじゃろう。ドラゴンライダーにライダーを持たぬドラゴンは逆らえぬと。増して、勝手にパレスを出て一人で噛み付いたのじゃ。この事実で、マイアは本来処刑されても文句が言えぬ」
「……だからってさ」
「このままそなたの肉便器にされても、文句は言えぬのじゃ。それがドラゴンの盟約というもの」
……うわあ、サドっぽい。
と、思うと、ライラはジャンヌの寝顔を見ているとき以外あまり見せない母性的な表情をする。
「それに、そなたの言う『らぶらぶエッチ』というのに、本当に憧れた顔をしていたのじゃ」
「……で、でもなあ」
「教えてやれ。エルフは頭が固い。あくまで臣下、甘えることを許さぬわけではないが、甘えることを教えてもくれぬ。……そなたが教えなければ、あと何百年でもこんな顔をして過ごすのじゃぞ」
「……本当に、いいのか?」
「うむ」
ライラは力強く首肯した。
「そなたは正義じゃ。少なくとも、今の我とマイアには、たった一つのな」
「マイア」
幻影からこっそり復帰すると、俺はわしわしとマイアの頭を撫でた。
ライラの幻影ではこういう事をされて嬉しがっていたというが、本当かどうかは俺にはわからない。ちょっとドキドキだった。
マイアは弾かれたように俺を見上げる。
「ちなみに小さくてもおっぱいはおっぱいだ」
「ウム」
ハリー爺さんが力強く首肯する。
子供たちがハリー爺さんを見る。
「小さくても、恥じることはない。それはそれで素晴らしいのじゃ」
「え、そ、そうなのかじっちゃん」
「坊たちも大人になればわかる……ああ、そうとも」
例によって老人と子供の心の交流は置いておくことにして。
まあその。数ヶ月前、まだセレンとディアーネさん、アップルしか女体を知らなかった頃は確かに俺、巨乳至上主義だったけど。
実はジャンヌやアンゼロス、あとオーロラとのエッチを重ねるにつれ、小さめおっぱいというのもそれはそれで良いものだという認識ができてきたことは否めない。
華奢な体にはそれに見合う大きさにも魅力がある。
まあ太ってるくせにナイチチとかバランスが悪かったらわからないが、幸いにして俺のところにいる微乳組はみんなバランスのいい体をしている。
そのほそっこい体から、ささやかに女性を主張する健気なおっぱいというのも、これはこれで非常にエロいと思うのですよ。
「ウム」
口に出してないのに力強く頷くハリー爺さん。はまあ置いといて。
「俺はそういうおっぱいも結構好きだぞ」
「……ほ、本当……?」
「ああ」
青い髪を撫でられながら、マイアは真っ赤になって、嬉しそうな顔をして、慌てて我慢して変な顔になって目をそらす。
……可愛いなあ。
「……そ、そっか、突っ張ってちゃ、駄目なんだっけ……」
ぼそぼそとマイアが水面に向かって呟く。よく聞こえない。
「ウム」
爺さんはもういいから。
「……あ、あのね、……その」
「マイア?」
「……う、嬉しい」
「…………」
小さい胸を褒められて、頭を撫でられて、それでももじもじしながら精一杯気持ちを見せようとするマイア。
「…………」
「に、人間?」
ヤバい、マジ可愛い。
……だ、抱き締めて、いいかなあ?
「ウム」
黙ってて爺さん。
……ああもう。信じるぞライラ!
「ええいもう!」
がばっ、とマイアを抱き寄せてしまう。
「っっ!?」
びっくりするマイア。
その髪をてろてろ撫でながら、囁く。
「ライラから余計なお世話、頼まれたけどさ。……俺、馬鹿だから、あんまり可愛い反応してると、割と本気になっちゃうぞ」
「……ほ、本気?」
「ライラたちみたいに俺の傍にいてくれ、とか……言いそう」
「……嘘」
マイアは俺を見上げた。
「……ど、ドラゴンナイトなら、もういらないよ?」
「知らないよ、肩書きなんか」
「わ、私と一緒にいるつもりなら、力の契約、させるよ?」
「……それって多重契約できるの?」
「…………」
あ、黙った。
できないのか?
「……ライラ様、できるの?」
……そうだった、コイツ世間知らずだっけ。
ライラはジト目で俺を見た後、鼻で笑った。
「ほ。ドラゴンが一つの正義に一頭のみ、とは盟約にはなかったと思うがの?」
「……不満そうだな」
「せめて一口食うてから決めればよいのに、いきなりその気にさせるとはどういう了見じゃ、この欲張り飼い主が」
「……うぅ」
反論できない。
でも。
「別にエッチの具合がよくなきゃ、一緒にいてほしくないなんていうつもりもないし。可愛いからいつでも抱き締められるとこにいて欲しいとか……思っちゃ、駄目かなあ」
「……わ、我にもそう思ってくれているかえ?」
……真っ赤になって横目でぼそぼそと言うライラ。
「お前は可愛いからというのとはちょっと違うけど……」
「……むぅ」
「でも、色んな意味でいつでも一緒にいて欲しいぞ。絶対」
コイツの美貌は可愛いとかそういう次元じゃない気がするし。
ド変態だし。
頼もしいし。
いじらしくもあるし。
一言ではちょっと言い表せない。
……まあ、出会って数ヶ月とは思えないほど思い入れてる。これだけは確か。
「……本当に、我をくすぐることばかり上手くて困るのぅ」
ライラは真っ赤な顔で溜め息をつきつつ、ヒュッと指を振る。
空間幻影を張ったようだった。
「じ、じーちゃん、あのおっぱいとちっぱい消えた!?」
「ウム。……ここから先は大人になってからじゃ」
……どこまで了解しているんだあの爺さん。
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