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 アップルは、まるで時が止まったように静かに眠っていた。
「……アップル」
 俺は、彼女に対して、初めて名前を呼ぶ。
 俺の初恋の人。
 俺にだまくらかされてえろいことをされて、それなのに俺に夢中になってしまった変なハーフエルフ。
 ……今見てみると、確かにセレンとは違う。髪形や髪の色、耳の長さやナイスバディなところは確かに似ているけれど、同一人物というほどに似ているわけではない。
「セレンの髪型とかは、わざと似せたんだったか?」
 確認するようなアンゼロスの質問に、セレンは複雑そうに微笑んで答える。
「はい。……まあ、もともとそんなに違う恰好していたわけじゃないんですけどね。よく姉妹と間違えられましたし」
「……血は繋がってないのか?」
「全然別です。アップルは北方エルフの紫の氏族のハーフで、私はアフィルム帝国の東の森エルフのハーフですから」
 初耳だ。
 ……というか、俺、セレンのこともアップルのことも本当にほとんど知らないなあ。
「えーと……うーん。やっぱりそっかー……」
 その間にも、ヒルダさんがセレンの頭や胸をあちこちなぞり、調べている。
「……症状聞いた時にもしやとは思ったんだけどねー」
「どうなんです?」
「一度死んじゃってる」
「……はい?」
 あっさりと深刻そうなことを言い放つヒルダさんに、聞き返す。
 ヒルダさんは軽く溜め息をついて、セレンの胸の真ん中やや左側を、トントンと叩いた。
「心臓射抜かれちゃったんだからそりゃ即死よ。……でも、霊泉ってよほどの力なのね。それでもギリギリ生命活動を再開させられた。たまーにね、ギリギリアウトのタイミングで大出力の医療光術叩き込まれて、こうなる人いるのよ」
「……で、その……つまり?」
「魂が一旦抜けかかって中途半端に引っかかってる状態。ひっくり返りかけたお鍋を慌てて力づくでフタおさえた感じ? 半分はこぼれかけて、現行時空からズレてるの」
「い、いやその、状態じゃなくて、治す見込みは?」
 喉が渇く。心臓がバクバク言う。
 ……駄目だったら、どうしたらいいんだ?
 このままってわけにもいかないし、かといってアップルを……殺す?
 馬鹿な。
 ……とか考えていた俺に、ヒルダさんはまたもやあっさりと。
「治るわよ」
「……よ、よかっ……」
「でも」
「!」
 ビクッとする。何か凄いペナルティあったりするのか?
「……えーと、アンディ君以外ちょっと全員でて。大丈夫だから。ちょっとね」
 いきなり全員、医者や看護婦含めて追い出される。

 そして。
「セックスで起こすやり方しか知らないの」
「……は?」
 とんでもないことを言い出した。
「どういうことですか」
「えーと。……こぼれちゃってるっていう例え話に繋げるとね、こぼれた具を戻すのは魔法でできるのよ。でもこぼれた汁はそれじゃ戻らない」
「……はあ」
「で、その汁っていうのは魂と肉体の間を繋ぐための特殊エネルギー体でね、普通は生まれる時に一定量が合成されて一生同じものを使うから基本的には後天的に発生させられないの。一応魔法で合成することも不可能じゃないんだけどカラーアジャストの精度に問題があってね、そこを埋めるための漢方もあるんだけどこれがまた入手困難で」
「あの全然わからないんで」
「……えーとね。要は魔法かけておちんちん入れて中出しすると子宮の中で覚醒に足りないものが発生して目が覚めるんで思い切ってやっちゃえ☆」
「……えー」
 いやその。
 いくらなんでも寝てる女の子を犯してる最中に感動の再会とか酷くないですか。
「大丈夫、避妊魔法はかけておくから!」
「そういう問題じゃないでしょう。なんつか、ほら」
「でもアンディ君の雌奴隷なんでしょう?」
「…………そういう話ではありますが」
「じゃあいいじゃない。ヨッ、使わせてもらってるぜ! でオールOK☆」
「…………」
「あーん、そんな顔しないの! 仕方ないじゃない、今のところ確実に覚醒させるには本当にこれしかないんだから」
「……うぅ」
 ごめんアップル。本当にごめん。
 ……いただきます。


 ヒルダさんにちんこに魔法かけてもらい、ついでに足も動くようにしてもらって、アップルの布団を剥ぎ、パジャマの下を脱がす。
 下着も脱がす。
 ……全く抵抗しない美人の女の子を脱がしてくっていうのも、意外とこう、来るものがあるな。
「大丈夫、アンディ君? 私が代わりに盛り上げてあげよっか?」
「い、いえ、おかまいなく」
 ……アップル。
 俺の、俺の……俺が一番欲した、15年間想い続けた、ハーフエルフ。
 その子と、繋がる。
 本当はいろいろ話してから、もっと当たり前に抱き合いたかった。
 万全の状態で、受け入れて欲しかった。
 でも、君とまた話したい。一刻も早く、君の笑った顔が見たい。
 だから。
「ちゅ……んくっ」
 無毛の、全く濡れていない陰唇に舌をつけ、充分に唾液をまぶしつける。
 正確にはまだ生き返っていないアップルの股間は、まだ快楽と連動していない。だからいくら刺激しても自ら濡らすことはないらしい。
 だからできるだけ唾液を流し込み、塗りつけ。
 ……そして、俺は彼女にのしかかった。
「アップル……!!」
 自分の唾液だけで濡れた、他人の膣。
 そこに無理矢理押し入ろうとする俺。
 案の定、引っ掛かりがあって、処女だとわかる。だがその処女膜を切り裂こうとしているのにまったく力の入っていない下半身の感触は、なんだか屍姦をしているようで少し空しい。
 が、その温かみが、本物の生きた彼女だと主張している。
 本当の意味で、本物に戻るために。
 本当の彼女と抱き合うために、俺は、唾液と血だけの膣を強引に犯し、腰を振りたてた。
「……っく……!!」
 そして、義務的に、射精。
 耳に響く、自分だけのドクドクという脈動が、これはただのオナニーだと思い知らせる。
 誰かと抱きあっている時は、相手の鼓動が聞こえるのに。その鼓動と自分の鼓動が重なる事が、嬉しいのに。
 でも。
 これで……。
「これで、いいん……です、よね?」
「ええ」
 ヒルダさんが頷く。
 その時、膣がピクッと動いた。
 眉根がビクッと動くのが見えた。
 蝋で作ったようだった顔に、表情が生まれ始める。
 痛み、困惑。
 ……そりゃそうだろう。目覚めのその時、いきなり処女地を犯されて中出しされているなんて、普通一瞬で納得できたらおかしい。
 それでも、俺は。
 15年思い続けてきた、彼女に「会える」。
 その瞬間を、ドキドキしながら待った。
 そして。
「………………」
 彼女の目が開く。
 俺に焦点を結ぶ。
 次の瞬間。

「き、きゃあああああああああああああっ!?」

 耳を劈く悲鳴。そして、突き飛ばされる俺。
「っぐ、ああっ!?」
 無様に転がる。
 ……い、いいんだ。そりゃ混乱するさ。だって10歳児が25歳の男になったんだもの。わからないさ。
 ……と、思ってアップルを見上げると。
「や、やぁっ……何、どうして……セレン、セレンッ!!」
 思いっきり混乱。
 やあ俺がアンディだよ、なんて言える雰囲気ではない。
 が、その声を聞いて、真っ先にセレンがドアを体当たりするようにして開けて飛び込んできた。
「アップルっ!!」
「セレン……セレン、よかった……あ、あの人が、私を……いま、犯して……」
「アップル、大丈夫、あの人アンディさんだから。よかった、アップル……本当に……!!」
 セレンはアップルを抱きしめて、涙しながらあやす。
「……な、何が、大丈夫って何、誰、って……!?」
「アンディさんだよ、アップル……私たちのご主人様の、アンディさん……15年も経ってるから大きくなっちゃったけど、あの人がそうなの」
「……セレン……?」
 アップルは、セレンの肩を掴み、ゆっくりと引き剥がす。
「……15、年……?」
「アップル、私たちがポルカに来て、アンディさんに会って、もう15年経ったの。アップル、2年も眠ってたの」
「待って」
 アップルは首を振って、俺とセレンを見比べる。

「……ポルカって、何?」

「アップ、ル……?」
「大体、なんてセレン、元の姿に……? トレント病にかかってたんじゃ……」
「アップル、え、ちょっと……待って、記憶……記憶、どこまであるの?」
「……だって、昨日、アフィルムの国境抜けて……」
「……アップル」
 セレンが信じられない、という顔をした。
「……その先の記憶、ないの?」
「…………」


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