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「ふむ。面白い結果になったのう」
ユリシス王が立ち上がる。
「して、この結果ということは、ランドールとの婚約を拒み、家を見捨てるということでよいのか」
アンゼロスは剣を鞘に収めながら、王を見上げた。
「ええ。そうです」
「ふむ。……薄情な娘を持ったのう、リンダ」
リンダさんは肩をすくめた。
「はん。やっぱり私の娘だ。ロクでもない奴に引っかかって、もう」
「べ、別にいいじゃないか、どんな奴を好きになっても」
「だけど、合格だ。アンタは間違いなく孝行娘だよ、アンジュ」
リンダさんはにっこり笑った。
「孝行とは?」
「わからないかい、爺さん。……あの子は私を信じて、自分の幸せを掴みに行くのさ。いいじゃないか、元気で幸せ、最高の親孝行だ。親の財産を守るために不幸になる娘なんか、私ゃいらないよ。なあに、この大商人リンダ・ノイマン、こんな国でなくたっていくらでもやり直してみせるさ。なんならクイーカにでも移ろうかね」
「ほっほっ。それは困る。シルフィードなくして今のトロットがあるものか」
……は?
ちょっと待て、なにこの和やかな会話。
「は、母上……?」
「悪いね、王様。ウチの娘が幸せかどうか確かめる為に、ちょいと利用させてもらったよ。何しろ首輪だからねえ」
「わかっておる。ランドールには悪いことをしたな」
「……はい?」
エクターが超情けない顔で王様とリンダさんを見上げる。
「昨日の朝、茶を飲みながらチェスをしていたらリンダが手紙を読んでオロオロとし始めてのう。ワシも見せてもらった」
「アンジュが元気でほっとしたけどね。大人の娘だ、正面からどういうことか聞いたってラチがあかないだろう? もし騙されてたり弱みを握られてたりするならなおさらだ」
「少し追い詰めれば、どういう関係が見えてくるじゃろうての」
……あっ。
言われてみれば、多分俺もアンゼロスも、これ以上ないほど赤裸々に自分たちの関係を説明してしまったことになる。
「はっきりしてないならウチに帰ってくるもよし、駆け落ちするならするもよし」
「のう」
……やられたーー!?
「アンゼロス……」
「……アンディ」
「くっ……お前のお袋さん最悪だな!」
「うん。今回ばかりは腹が立った」
『はっはっはっはっはっ』
腹を抱えて笑うリンダさんと王様。
どうしてくれよう。いや、どうもできないけど。
ディアーネさんとセレンも呆れた顔をした。
「性格の悪い老人だ」
「全くです。どうするんですか、アンディさん。変な約束しちゃって」
「へ、変な約束?」
結婚しよう、とかは言ってないはずだけど。
「アンゼロスさんが勝って帰ってきたら壊れるまで犯してあげるんでしょう?」
「……有効なのアレ?」
ちょっとどうなんだろうなー、と思いながら呟くと、アンゼロスはオーロラと一緒にてくてくと客席に上がってきて。
「無効だったら酷い話だぞ。タダ働きじゃないか」
「いや壊れるまでってお前」
「……まあ気絶するまでにまけてやってもいい」
まけてそれかよアンゼロス。
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