オーガ族の角というのは、部族にもよるが多くの場合アイデンティティに直結する重要な部位である。
何しろ戦闘種族と言われるほど戦いに特化した種族だ。巨大な体躯も発達した犬歯も確かにオーガらしさではあるが、やはり闘志と攻撃力を司るかのような角こそがオーガの象徴というのは、誰しも異論を挟むまい。
ゆえにオーガ族は角をとても大事にする。
角というのは伸びる器官なので、実は手入れが欠かせない。形を整えたり長さを調節したり、部族によっては象徴的な模様を彫り付けたりといった加工が常に施されている。
が、これはいくら仲間といえども、他人にはまずやらせない。自分自身の手でこれをやるのがオーガ族のプライドだ。
多くの場合、他種族にはその努力など気にもされていないが、実はその加工にも流行り廃りがあり、先端に二又になるように切れ込みをつけたり、等間隔に節目を彫りつけたり、それこそ簡単に突き刺さるほどに鋭く尖らせたりするといった様々なブームがあったりした。
「まあ若い頃はそれがかっこいいと思ったのさ」とはよく聞かれるオーガ族の中年の言い訳である。
強度的な面を考えるとどれも不利なのだが、荒事を多く潜り抜けてなおその伊達な角が無傷というのが、血の気の多い若者にはやたらカッコよく見えるのだった。まあ大抵は、それを目指すも志半ばでポッキリやって大後悔というオチなのだが。
閑話休題。
アーニー・ボイド準兵(最近19歳になったオーガ族男性純情派)はそんなワルな角加工とは縁のない男である。
何しろデュアルコーン(二本角)のオーガの癖に片方がない。諸事情で根から引っこ抜かれて二度と生えない。この時点でオーガ的には既にかなりカッコ悪いのだ。
それでも残った角は結構大事にしていたのだが、それも数ヶ月前にポキッとやってしまった。
まあ人命救助と彼女ゲットの引き換えになった形なのでそれでも納得はしていたのだが、最近はもう結構伸びてきたのでどうしたものか思考中である。
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