前へ
アーニーが目を覚ましたのはそれから二日後だった。
「……ボイド! ボイドが目を覚ましたぞ!」
街の診療所のふかふかの布団の中で、アーニーは身体を僅かに動かす。あちこちが軋むが、なんとか五体揃っているようだった。
そんなアーニーを見てディアーネ百人長がホッとした顔をする。
自分が心配されていたことが嬉しくて、アーニーは唐突に涙を溢れさせながら「すみません」と呟いた。
そんなディアーネの声を聞きつけて、真っ先に部屋に飛び込んできてアーニーに飛びついたのが、
「よかったっ……!!」
シルビア・マクレイン。助けた娘だった。
アーニーの最後の行動は、シルビアを無傷で守った。
壁との衝突と馬車の圧壊の中、アーニーの巨大な手がシルビアを守りきったのだ。
目覚めたシルビアが最初に見たのは、モルタルの壁を半壊させながらも自分を優しく握って守るアーニーの姿。
そして。
「……あのっ。私が、ボイドさんのお世話しますからっ!」
「いや、いいっス。申し訳ないっス」
「命の恩人なんだからやらせてくださいっ!!」
「……う、ウッス」
押し切られて、それから10日間ほど食事から小便の世話まで全てシルビアに手伝ってもらうことになった。
そして、一ヶ月。
「……アイザック十人長。明日、清掃当番別の日と変えてもらえないっスか」
「おー、どうしたボイド。例の人間の女の子とデートでもすんのか」
「……驚かないで欲しいんですが。そうみたいっス」
「…………なんだとおっ!?」
がたーん、とケリーが立ち上がりながら叫ぶ。なんだなんだと他の隊員たちも集まってくる。
「なんだなんだ、どうした。説明しろアイザック」
「お、おう、スマイソン。なんだかこのバカが人間の女の子とデートだって」
「マジか」
「マジっス」
「どういうことだボイド!」
「い、いや、だからその、僕にもさっぱり」
次へ
目次へ